「いや、まだ……」



「今は見つからなくたって、とにあえず大学に行ってみたら見つかるものよ!

それで見つからなかったら、公務員にでもなれば良いじゃない?

今の時代、大卒じゃなきゃ……」



何か分かったらように、

ペラペラ喋る母さんが僕の親だということに恥ずかしさ。



というより怒りの方が強く芽生えてきた。



「うぜんだよ……」



「え?今何て?」



今まで押さえてきた感情が爆発する。



気づいた時には、教室内に響きわたるぐらいの声量で怒りを露わにしていた。



「うぜェつってんだよッ!!」



「おい、一ノ瀬!」



今田は慌てるように、僕を宥めるが、

そんなのお構いなし。



溜まりに溜まった感情を次から次へと吐き出していく。



「親の勤め?はあ?笑わせんなよッ!!

それになんだよ、この子のためって。

誰がいつ頼んだよ!余計なお世話なんだよッ!!」



「一ノ瀬、一回落ち着けって……」



今田も負けじと諦めずに宥めようとするが、

僕を止めることはできない。



この怒りをどうしても、

僕は鎮めることができなかったのだ。



「何よその態度ッ!!お母さんわね、あんたに私達のように失敗して欲しくないから言ってんでしョ!!」



母さんも先生の前で悪態つく僕に腹を立て、親子喧嘩は過熱していく。



「はぁ?じゃあ、大学行ったら失敗しねえのかよッ!!あぁ!!」



「それは……」



「何もいい返せれねぇじゃねえかよ、くそババァ!!」



つい、そんな言葉を口に出してしまった。


クソババァなんて初めて口にしたし、

言われた本人も驚きと怒りを隠せれていない。



母さんの顔は赤く染まっていた。




「あんた、親に向かってェ!!」



僕の頬にキーンと衝撃が走った。



味わったことのない痛み。



別に頬が痛いわけじゃない。



頬とは別に、何かが胸に刺さったような痛み。



僕は母さんを睨み返し、教室を飛び出した。