「それでですねぇ、こないだ模試がありまして。一ノ瀬君の今段階の結果なんですが……E評価」
「え!一番下じゃない?!それ大丈夫なの?」
突如、今田の放った言葉。
母さんは初めて聞く結果に、
愕然と驚きを隠せずにいた。
「そうなんですけど……
まだこれから勉強を頑張れば、D、C、B、Aと順に上がっていく思いますので……一ノ瀬!」
何とか母さんを落ち着かそうとしてくれたのだろう。
今田は丁寧な口調で言い、僕に問いかけた。
「はい」
「一ノ瀬は大学志望でいいのか?」
「え?それは……分かりません」
急な質問に戸惑った。
正直、
自分でもどうしたらいいのか、分からない。
何をしたいのか?
どうしたいのか?
僕には夢がなかったから。
「ちょ……ちょっと何言ってんの?
ホントにこの子ったら!
大学行くに決まってるでしょ?!
先生、ちゃんと大学までいかしてあげるのが親の勤めであり、この子のためですから」
母さんは僕のことなんて、
さておいて話をどんどん進めようとする。
それが無性に腹が立って、
握りしめた手は震えていた。
「……やりたいこと見つかったか?」
今田は母さんの言葉を受け流すように、
僕の意見を聞こうとしてくれた。
そんな気がした。


