人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜




仲冬——



「——こないだやった模試の結果が返ってきたから、これから返すぞぉ。夏に比べて少しだけ難易度が上がったせいか、みんな手こずったみたいだな!」



「でも、学年が上がるにつれ、出題される範囲も増えていく。さらに難しくなっていくから、今から返す模試の苦手箇所を重点的に見ておくように!」



担任の今田が真剣な面持ちで、

僕たちに説明をしている中、

僕は隣の席に座る夏実のことで、

頭がいっぱいだった。



自分の模試の結果なんて、どうでもよくて……。



夏実の模試の結果の方が気になるばかりだった。



「それじゃあ、返していくぞ、安西!一ノ瀬——」



今田が出席番号順に名前を呼び、

僕たちの心臓の音は大きくなっていく。



僕は返ってきた模試の結果をちらっと見るだけで、それ以上は見ていない。



次第に夏実の順番が近づくにつれ、

心を落ち着かせるのに必死だった。



「——森本!」



夏実の名前が呼ばれ、不安そうに今田から受け取るのを僕は確認する。



夏実は席に戻るが、受け取った模試の結果をなかなか見ようとしない。



むしろ時間だけが過ぎていき、僕の気になる気持ちをさらに急かせる。



現実を受け入れることが怖いのだろうか。



手が少しだけ震えているように見えた。



「夏実!大丈夫か?」



僕が心配そうに尋ねると、夏実はハッとするように、僕の声を聞いて驚いた。



「あっ……うん。お願いなんだけど、仁くんが見て!」



夏実は顔を背けながら、持っていた模試の結果を僕に突き出す。



驚くようにして、僕は夏実からゆっくりと受け取り、模試の結果に目を通した。