人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

「……また寒くなって来たな」



何か会話しなくちゃと咄嗟に出た僕の言葉に、夏実は微笑みながら僕に尋ねた。



「ふふ、聞かないの?」



「え?」



遠くの方へ目線を向ける夏実の横顔から、

少しだけ寂しさを感じた。



「何で落ち込んでたのか……」



「それは……気になってたけど、聞かない方がいいのかなって」



「なら、変に気を使わせちゃったね」



「別に……そんなこたねぇよ!話してくれるんだったら教えてくれよ」



あれだけ笑顔で振る舞っていた夏実の笑顔も今では、何かに吸い取られたみたいに暗い。



「あのね……たぶん部活辞めるんだよね」



僕は耳を疑った。


あれだけ好きだと言っていた音楽。



気持ち良さそうに吹いていたのに、

辞めるだなんて。



「え!何で?」



「お母さんと約束してて……」



「約束?何を?」



「テストや模試の結果が悪いと勉強に専念するって約束してたの!」



全然知らなかった。



夏実は成績優秀で学年では、

いつもトップを走っていた。



それは、部活を辞めさせられないように、

努力していたからだろう。



僕は夏実が落ち込んだ日を遡るように、

思い返しては確信した。



なぜ、

夏実が部活を辞めないといけないのかを。