人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

「あれ?もしかして来たらまずかったかなぁ?」



夏実は僕の困った顔を見て、

悲しそうに言った。



「このバカッ!せっかく誘ったのに夏実ちゃんを困らせるなって!」



航兄ちゃんは夏実の暗くなった表情を見ては、僕の頭にお灸を据える。



よく考えてみれば、夏実も勇気を振り絞って来てくれたのだろう。



「いや、違うんだって!たださぁ、ただ……」



正直、今置かれたこの状況をどう打破しようかで精一杯。



何とか上手い言葉で、切り替えそうと、

口を詰まらせた時だった。



燈也が夏実の側にそっと近づいて行く。



「ねぇねえ。お姉ちゃんは仁兄ちゃんのことが好きなの?」



小さな背に、つぶらな瞳。



何故だか分からない。



何で聞きたかったのか。



しかも、このタイミングに。



僕たち、大人は数秒間、

何が起きたか分からなかったが、

すぐに頭が追いつき笑っていた。



「おい、燈也!」



僕はこれ以上、燈也に変なことを言わせないように、こちらへと呼んだ。



それでも、燈也と同じ目線になって、

夏実は照れ笑いを浮かべながら、

口を開いた。



「ふふ、うーん?好きだよ。燈也くんは仁兄ちゃんのこと好き?」



「うん!大好き」



「ふふ、なら一緒だね」



夏実は優しく燈也の頭を撫で、

いつのまにか変な空気を吹き飛ばしていた。



安心したのか、

琴美姉ちゃんも微笑みながら、

BBQの準備を始め、

航兄ちゃんも網の上に食材を焼き出す。



僕はそっと夏実の側に行き、

頬を紅く染めながら、

照れ臭そうに口を開いた。



「何があったか知らねえけど、元気そうでよかったよ」



何があったかは聞かず、

夏実から言ってくれるのを待つことにした。



「うん。ごめんね……」



「謝んなって!やっぱ夏実は笑ってないとダメだわ」



「え?」



「だって、こんな顔してたんだぜ!」



僕は大袈裟に夏実が落ち込んでいた時の表情を、変な顔をして夏実に見せた。



夏実は僕の顔を見ては、

口を膨らますように笑顔で叩いてくる。



「ちょっと!絶対、バカにしてるじゃん、ふふ」



「いやいや、してないって!それに、こんな顔のときもあったじゃん」



僕は畳みかけるように、また変な顔をして、夏実を笑顔にしてみせた。



やっぱり僕たちは、こうじゃないと。



夏実の満面の笑みに一安心し、僕は皿と箸を持ち、動き出す。



「兄ちゃん、肉まだぁ?」



「今、焼いてるからちょっと待ってろ!」



航兄ちゃんは笑顔で、色鮮やかな食材の色を変えていき、冬のBBQが心と身体に沁み渡っていく。



大好物の焼肉を頬張る僕と燈也に、お肉の美味しさにまだ気づいていない下の子達。



最初は遠慮がちだった夏実も気づけば、冬のBBQを楽しんでいた。