人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜




《夏実SIDE》



夜の雨に冷たく吹きつける風、

真っ暗な世界を前にして、

心は泣いていた。



水溜まりに映り込む自分なんて、歪んで見える始末。



夏実は地元にある大型スーパーで、

それも外のベンチに座り、

何かを考え込んでいた。



座っているベンチはギリギリ雨で濡れない場所だったけど、冷え切った空気は容赦なく夏実の体温を奪っていた。



すると、夏実だと気づいたのか。



一人の男性が声をかけてきた。



「あれ?!えーっと、な……夏実ちゃん?」 



聞き覚えのある声、

そして、厳つい顔付き。



声をかけたのは、航だった。



たまたま用事で寄っただけだったけど、

浮かない顔をした夏実を偶然にも発見する。



「え?仁くんのお兄さん……」



「やっぱり、そうだよね!何してんの?こんなとこいたら、風邪ひくよ?」



航は身体を擦るように、

夏実のもとに歩み寄り、

何故だか分からないが隣へと座った。



「え!ちょっと、いろいろありまして……」



「いろいろ?もしかして仁と喧嘩でもしたぁ?」



「いや、そんなんじゃなくて……」



「ふーん、ちょっと待ってて!」



「え?あっはい……」



航は近くにあった自動販売機を見つけては、

夏実のために温かいココアを買い、

それを夏実に笑顔で手渡した。



「はい、これ!」



「え!いんですか?」



「うん!寒いじゃろ?身体冷えるといけんから飲みな!」



「ありがとうございます」



夏実はもらったココアの缶で手を温めるようにして、遠慮せずに一口飲んだ。