人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

「ごめんな、結構濡れたよな?」



「ううん、私より仁くんの方が……」



「俺は平気だって!風邪ひくから早く、入りな!」



僕は自分のことなんて忘れて、

夏実を気遣うように、家に入るよう促した。



「うん。ごめんね、私なんかのために」



「何言ってんだよ!誘ったの俺の方なんだし、むしろ俺の方こそ……ごめんな」



髪や肌は濡れ、冷え切った体温を心配してくれてるのだろう。



僕は明るく振る舞おうとするが、

雨のせいで、

感情の上げ下げの調整が効かない。



「ううん」



「言い忘れてたけど、その服可愛いな……今は濡れちゃったけど」



「え!あ、ありがと……」



言うタイミングを間違えてるのは分かってる。



別に言わなくたって良かった。



でも、心の底でずっと思ってたことをただ吐き出したかっただけ。



夏実は頬を紅くし、照れ笑いを浮かべていた。



「……じゃあ、帰るわ!」



「う、うん、今日はありがとね」



「うん。夏実と行けて楽しかったよ」



「うん、大丈夫?まだ降ってるけど……」



夏実は空を見上げ、降り止まない雨を気にする。



「平気平気!これぐらい大丈夫だって」



「そっか、気をつけて帰ってね」



「うん、ありがと。また明日学校でな!」



「うん、じゃあね」



僕は土砂降りの雨の中、沁みる思いで家へと帰って行った。



当然、ずぶ濡れになった僕は次の日、熱が出て学校を休む。



母さんは心配するどころか、呆れた感じの様子だった。



母さんとは違って、夏実は心配するかのように、連絡を毎日くれた。



あれだけ平気だと言っていたのに、風邪をこじらせた僕を笑っていた。



風邪が治ると、可愛らしい紙袋と一緒に、貸していた僕のパーカーは戻ってきた。



「ありがとう」と少し恥ずかしそうに、夏実は僕を見て微笑む。



何処となくぎこちなくなった気がする二人、

10月もあっという間に終わっていった。