人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

僕は夏実を家まで送るため、自転車を押した。



何となく長く一緒に居たかったんだと思う。



二人乗りなどせずに、自転車をただ押し続けた。



楽しかったはずなのに、今ではしんみりした感じ?



そのせいか、空も濁り始め、

ポツポツと雨が降ってきた。




「うわっ!雨」



「ホントだぁ!どうしよ?傘ないし濡れちゃうね」



「とりあえず……ふん!」



僕は着ていたパーカーを脱いで、夏実に渡した。



雨は次第に強くなり、容赦なく僕たちに向かって降り注ぐ。



「え?!」



「風邪ひくから早く!」



「でも仁くんが……」



「俺はいいから!せっかく来てもらったのに、風邪でも引かれたら嫌だからさ」



僕は強引に夏実が濡れないように頭まで、

着ていたパーカーを被らせる。



とりあえず早く帰らなきゃ……。



時間も時間だし、夏実の家族も心配しているはず。



僕はずぶ濡れになりながら、自転車に跨った。



「でも、絶対寒いでしょ?」



「え?いいからいいから!……こう見えて暑がりなんだよ」



僕は半袖一枚になり、身体の震えを夏実に悟られないようにするので必死だった。



「……ありがと」



「うん、早く後ろ乗りな!」



「え?あっ……うん」



「夏実んちまで急ぐわ!」



夏実を後ろに乗せると、

僕は必死にペダルを漕いだ。



雨が僕を嫌うかのように、

一粒一粒重くのしかかった滴が僕を苦しめる。



でも実際は、雨が夏実と僕を近くに、もっと寄せたかったのかもしれない。



夏実は僕にひっつくように腕を回し、僕のパーカーから香る僕の匂いを嗅いでいた。



天気予報では雨が降るって、言ってなかった気がするんだけどなぁ……。



一向に雨は止む気配がしない。



むしろ強くなる一方。



早くしないと……。



夏実の手が震えているのが、僕の肩から、

ひしひしと伝わってくる。



僕はがむしゃらに足を動かして、

夏実の家へと辿り着いた。