人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

「ごめんな、酔うとめんどくさいんだよ」



「ううん。良いお兄ちゃんだね」



「そうかな?」



「うん、優しくて面白いじゃん!」



「まぁ……それはそうだけど」



「なんか……仁くんが羨ましい」



「え!何で?」



夏実の寂しそうな顔に何だか疑問を抱いた。



「ううん、何でもない……あっ仁くん見て!あれ食べようよ!」



夏実は何もなかったかのように、笑顔で走って行った。



これは流した方がいいやつ?

僕はこれ以上のことを聞くのをやめることにした。



「え!……うん」



僕は夏実のあとを追うように、言われるがままついて行った。


フランクフルトや焼き鳥、おでん、他にもたこ焼きなどの豊富な屋台が立ち並んでいる。



こうした屋台などの模擬店は町内会や子ども会、消防の人たちの協力があって成り立っていた。



夏実はその中でも、おでんに目を取られ、熱々のおでんを美味しそうに食べていた。



相撲が終わり、カラオケ大会や演劇が始まる。



演劇には、僕の父さんが町内のご近所さんと一緒に出ていた。



毎年のように出る父さんは、

なぜだか分からないが、

今年は女装に扮していた。



僕は見た瞬間に身体中が凍りつくぐらいひいていた。



もちろん、夏実には女装した人が僕の父さんだとは言っていない。



むしろ、言えなかった。



夏実は僕の父さんだとは知らずに、

劇を見ながら笑っていた。



全ての屋台は完売、そして一通りの演目は終了して、次第に人の動きが活発になる。



片付けで残ってる人、お喋りに夢中な人、家に帰る人。



今年の秋祭りも盛り上がり、無事何事もなく終わることができた。