遠くで、賑わう声や音楽に混じって、

屋台の良い香りがしてくる。



坂を少し上ったところに八幡神社はあり、

敷地内では屋台がずらりと並んでいた。



僕たちは自転車を置き、八幡神社内へと歩いて向かった。



僕と夏実は距離感が近くて、

カップルだと思われてもおかしくないなかった。



それぐらい僕達の仲睦まじい感じを見て、町内のおばさんや同世代の知人に勘違いされ、何度も何度も説明したものだ。



ふらふらとした足取りで長い階段を上がって行くと、土俵の上で子ども達が相撲をとっていた。



熱気に誘われるように観ていると、

琴美姉ちゃんが僕の方へと駆け寄ってきた。



「あれ?!仁くん、来てたんだぁ。次、燈也出るよ!」



「え!ホント?!じゃあ、見ないとだね」



小さい頃は僕も泥まみれになりながら、相撲やってたっけ?



今となっては甥っ子が出てるなんて、何だか感慨深い。



僕は背伸びをするように、大勢の観衆に混じって燈也を見守った。



相撲で気を取られている僕に、

夏実は「誰が出るの?」と一緒に覗き込む。



「甥っ子!もうすぐ出るんだって!夏実も応援してあげて」



そう言って僕は夏実の手をとり、

観衆をスルスルと通り抜けて、

前の方へと突き進んだ。



前に来ては、しゃがみ込み、

土俵の上に立つ二人のうち、

背の高い方が燈也だと教えてあげる。



そしたら夏実は笑顔で、

「燈也くん頑張って〜」と応援していた。



その応援もあってか、燈也は力強く相手を押して、土俵の外へと押し出した。



「きゃー、やったぁ!やったね、仁くん!」



「うん、だね……はは」



今日、僕の甥っ子だと知ったばかりなのに、燈也が勝つと飛び跳ねるように喜んでくれた。



僕の甥っ子のために、こんなにも。



何か感じるものがあり、

夏実の言動に可笑しくなって、

僕はいつしか笑っていた。



燈也の次は、奏也の番がやってくる。



同い年の子と相撲をするのだが、

押したり倒したりをするわけでもなく、

ただの突っつきあいっこ。



夏実は、「可愛い〜」って笑いながら、

奏也たちを眺めていた。



相撲は盛大に盛り上がり、

いつしか僕たちは相撲を見るのに、

のめり込んでいた。