《夏実SIDE》



勉強机にやり残した問題集の山。

壁一面に貼ってある男性アイドルのポスター。

ピンクで揃えられた家具類に、ベッドの上に散乱した衣類の山。



夏実は姿見鏡の前に立ち、次から次へと衣類を鏡で確認しては首を傾げるだった。


ハァ……どれにしよう?

ガーリッシュ系でいいのか、ここはカジュアル系にしてみるか、はたまた攻めのギャル系にしてみようか、そうやって考え込むうちに、刻一刻と時間だけが迫ってくる。


秋祭りに行くだけなのに、服選びだけで、かれこれ30分は格闘しているが決着は一向につかない。



ベッドの上に散乱したスカートやズボン、ワンピースなどの衣類の山がより一層高くなっていくだけだった。


よし、決めた。

今日は攻めのギャル系で行くか!



姿見鏡の前に立ち、ショーパンが隠れるほどのジャガードニットを着ることで美脚をより際立たせることに成功。


入念に化粧や口紅を塗り、髪を巻かせることで、より一層大人な色っぽさを魅せるができた。



よし、これで完璧。


夏実はベッドの上に散らかした衣類なんて気にもとめず、急いで部屋から飛び出して行った。



「ちょっと、夏実!どこ行くのー?」



すると、夏実の母親は足音を立てて降りて来る夏実に気付くと、飛び出して出て行った夏実の背中に問いかけた。



「ちょっと遊んで来るゥ〜!夜までには帰るからァ〜」



「夜?……ちょっと夏実、待っちなさい!勉強の方は大丈夫なのォ〜?もうすぐ模試があるんじゃないの?!」



「平気平気!ちゃんと勉強してるから!じゃ、行っていま〜す」



夏実は母親の返答も待たずに、待ち合わせ場所へと向かう。



「ちょっと夏実ィ〜!もうホントあの子ったら……模試の結果次第じゃあ……ハァ」



珍しく出かけて行く娘の後ろ姿を不思議そうに見つめては、唖然と大きなため息が溢れ出していた。