第一章



-雨に寄せられて-







秋祭り、当日。



街中に轟き渡る『わっしょい』という掛け声。


由緒正しき建造物が残るこの街を駆け巡る神輿の迫力さ。


子ども達や大人達によって発せられる熱気。


格別で今日だけは賑やかしく、秋祭りが始まったのだと知らせてくれる。



今日は神輿が町内を回る日で、

道端には大勢の人がまだかまだかと言わんばかりに、

神輿がやって来るのを楽しみに待っていた。



本来なら僕もそのうちの一人なのだが、

夏実が午後からがいいという理由で夏実とは神輿を見ることができていない。


だから、僕はこうして自分の部屋から家の前を通過していく神輿をただひっそりと眺めているだけだった。



先頭で神輿に繋がれた縄を力一杯、

引っ張る燈也が目に映り込むと、

家の前で下の子二人と一緒に燈也を応援する琴美姉ちゃんも確認できる。


そして、

神輿の近くで警備に努める航兄ちゃんや亨兄ちゃん達の姿も見て捉え、

秋の風物詩と言える波のように渦巻く青色の法被《はっぴ》を着た人達の景色や神輿の華やかさに僕は魅力され続けていた。