「えッ!それって……もしかしてデート誘ってる?」



僕が呟くように言うと、

夏実はきょとんとした顔で、

確認するかのように訊いてきた。



僕は恥ずかしさを隠すのに必死で、

下手な言い訳を用意する。



「えっ!そんなんじゃなくてさ……他に行くやつ探すのめんどいじゃん?だから夏実とかどうかなって」



「へぇ〜あっそう。めんどくさいから私なんだぁ?じゃあ、他の人探したら?」



夏実はあからさまに機嫌を損ね、僕は先ほど言った言葉を後悔する。



「えッ、違うって!えーっと、その……ごめん。誰、誘おうかなってなった時、一番最初に出てきたの夏実だった。それは本当!」



「……ふふ、明日は何もないかな〜」



夏実の機嫌が治ったのだろうか、

微笑みながら僕にそう告げた。



「え?」



「いいよ。一緒に行こっ!」



「うん」



「ふふ。仁くん、ホント誘い方へたくそだよね〜」



「うるせぇよ」



「もっとカッコよく誘えないの〜?」



「はぁ?誘った奴、間違えたかも」



いつものような言い合いが始まり、

二人は楽しそうに会話をしていた。



「えッ!じゃあ、いいの?行かないよ?」



「はい、すいませんでした」



「ふふ、冗談冗談。楽しみにしてるね」



僕の急変する態度に笑いを見せつつ、

夏実は揶揄うのをやめた。



「うん。八幡《はちまん》神社でするから、また連絡するわ」



「うん。今日は来てくれてありがとう」



夏実は再度、僕に満開の笑顔を見せ、

感謝の意を伝えてくれた。



「ううん。聴けて良かったよ」



「なら、良かった!また集まらないといけないから、またね」



「うん、じゃあね」



話し終わると、夏実は大きく手を振りながら戻って行った。



その後ろ姿を見送り、

僕は夏実が見えなくなるのを待ってから、

文化センターから出て行った。