人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

指揮者の先生が深く頭を下げ、

いよいよ演奏が始まった。



鳴り響く楽器の音色は時折、

優しく時折、

ダイナミックに様変わりする。



正直、

聴いたことのない楽曲ばかりで、

受付でもらったプログラム表を確認する始末だった。



はっきりとは見えなかったが、

夏実は力強くトランペットを吹いていたに違いない。



初めて聞くような曲もあれば、

一度でも聴いたことのある曲まで、

一曲一曲を僕は肌で感じながら聴いていた。



順調に進んでいくプログラムはついにクライマックスに突入。



最後の曲へと差し掛かり、

ゆったりとした演奏が流れ始める。



あれ?



これってもしかして?



花形であるトランペットの力強い音色が会場に響き渡り、聴いている者を魅了していた。



あの時、夏実が練習していた曲だと、

僕は直ぐに気付くと、

吸い寄せられるように演奏を聴き入る。



隣で聴いていたおじいさんはもちろん、

我が子の演奏を観に来た家族の皆んなや地域の人達が一斉に、大きな拍手を送っていた。



初めてきたけど、

何だか例えることが出来ない気持ち良さと興奮の余韻に今、浸っている。



僕は気づいた時には感動の余り立ち上がり、

笑顔で夏実たちに大きな拍手を送っていた。



夏実も赤色の目立つ服を着た僕に気付いてくれたのだろう。



笑顔でこちらを見ていた。



「いや〜素晴らしかったね」



おじいさんは僕にそう告げると、

会場を後にする人達に混ざり、

立ち去って行く。