人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜


開演時刻になり、

吹奏楽部の生徒達がステージ上に出てきて演奏する席に座ると、準備をし始める。



僕は夏実がどこに居るのか、

目で追って探していた。



「兄ちゃんは兄弟でも出るんかい?」



探している最中、

おじいさんは僕に尋ねてきた。



「いや、そんなんじゃなくて。友人が出るので観にきたんですよ」



「あーそうだったのかい。わしは孫が出るから観に来たんだが、歳かの〜?どこに居るのかさっぱり分からん」



「それは残念ですね」



「トランペット吹くみたいなんだが、トランペットは大体、どの辺か教えてくれんかね?」



僕は言われた通り、おじいさんのためトランペットを吹く人達の列を探していた。



というのも自分が探している人もトランペット担当なので都合がよい。



三十をゆうに超える部員達の中から、

トランペットを持つ人達が数名目に映る。



その中に夏実の姿もあり、僕は自然と笑みが溢れた。




「えーッと、僕たちから観て右側ですね!って言っても一番、端ではないです。大雑把でごめんなさい」



「いやいや、だいたいで大丈夫。親切にありがとね」



おじいさんは僕に笑顔で礼を言い、

じっと教えてあげた方を見守っていた。