人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

深まる劣等感を放ったらかしにしたまま、僕は燈也の宿題を見守っていた。


ほんの少し前まで平仮名だったのに、もう漢字なんて習って。



「ここもう一回、綺麗に書こっか?」



燈也が乱暴に書いた大きな字を消しゴムで消し、僕はまた燈也に綺麗な字で漢字を書かせた。



なんだかんだ、

子どもと接するのは好きの部類に入る。



というか、接するのが好きというより、

可愛いから好きの方が合っている気がするけど、

一緒にいると心が落ち着き、和む気がした。



甥っ子達の相手をしていると、時間が経つのが早い。



燈也は宿題をする時は物静かで、真剣な眼差しで鉛筆を握りしめる。



洸也も燈也のまねをしているのだろうか、

文字みたいなものを書いては、僕に見せてくれた。


奏也はというと相変わらず、ぶつぶつと何かを言っている。



そんな僕は夏実の演奏会に行く予定があるから時刻が気になり始めた。



夏実から貰った第三回定期演奏会のチラシを見ながら、再度開始時刻を確認する。



チラシを眺めていると、

下にひっついていたチラシがヒラヒラと舞い落ちる。


秋祭りのご案内と書かれたチラシが視野に入り込み、

僕はしばらくそのチラシを眺めていた。



明日は秋祭りか。


子ども達が元気いっぱいのかけ声と鐘、太鼓を響かせながら神輿を担いで、街中を巡る行事が明日あるらしい。



僕も小さい時、神輿を担いだっけな。


400年の歴史があり、

午後から子ども達の相撲や演劇、

屋台なども立ち並ぶ程、

地域の人らで賑わうイベント行事を思い返した。



行ってみようかな?



でも誰と……





しばらく考えた僕は行きたい相手を思い浮かべる。



もう頭の中はその人だけだった。