「意外だわ!夏実は心臓に毛でも生えてんのかと思ってたからさ」
「いや、それは失礼すぎない?私、厚顔無恥な女じゃないからね。ごく普通の心優しき女子高生だから」
「へぇ〜そうなんだァ、へぇ〜普通、自分で言うかよッ!?(無表情)」
僕は夏実が言ったことをワザと適当に受け流すと、「ねぇ、何よ、その反応!死にたいわけ?」と少し苛立ち気味の夏実から容赦ない尋問を受け、身震いが始まり出す。
「いや、できたら殺されたくはないけど!」
「じゃあ、発言には気をつけなさーい」
夏実は揶揄うようにして僕の頭を揺らしてくるものだから、僕はメトロノームの振子みたいになっている。
「分かったから揺らすの止めてくれない?」
「イーヤーだァ!」
「あァーー、危ないって」
ふざける夏実は揺らすのを止めない。
僕は夏実に好き勝手弄ばされ、横揺れがどんどん大きくなっていき、押されて返ってきた反動は耐えきれなくなり、身体は勢いよく夏実へと襲いかかった。
「きゃッッア!!」
何だか僕の左頬が温かい。
あれ?
僕は夏実の膝の上に頭を乗せ、有難いごとに膝枕をしてもらっちゃってる始末(これは夢ですか?)。
状況整理、状況整理、状況整理……。
お互いの頬が赤く染まり始め、何が起きたのかを整理できるようなった時、この状況がどれだけ気まずい空気に変わってることかに気付かされた。
やばい、やばい!!!
この空気を変えようと「太もも丈夫だね」って切り抜けようとしたら、腹パン貰う始末(危ない危ない、焼きそばパンが出るとこだった)。
いや、もうこの際、変態だと思われなければ何されようが、何言われようがどうだっていい。
「ちょっと、早くどきなさいよ!この変態!」
(心の声:はい、終わったーー)
結局、僕は変態として扱われてしまう始末。
もうどうでもよくなり、投げやりな気持ちになっていく僕は何故だか知らないが微笑む夏実に違和感を覚えた。
あれれ?
もしかして膝枕されて嬉しいとか?(天の声:そんなわけあるか!《即答》)
じゃあ、なんでなんだ?
疑問を抱きながら、ふと目線を下に下ろすと、さっきわちゃわちゃしたせいでジュースが倒れているのに気付かされた。
《ガンバレ》
ペットボトルの底はハッキリと見え、僕が書いた応援メッセージが丸見え状態。
なるほど、そういうことか!
って……(恥ず)
夏実は「明日、頑張るね」って、ご機嫌な様子で僕の肩を強めに叩くと、大事そうに僕があげたジュースを持って走り去って行く。
「痛ッ!ちょ、待ッ、ッ夏実の野郎!」
僕は夏実を捕まえようとすぐさま追いかけると、夏実は笑いながらキャッキャキャッキャと雄叫びをあげている。
廊下を駆け回り、楽しそうにする二人はもちろん恋人関係ではない。
ただ将来について、家族について、悩み苦しむ似た者同士。
まぁ……今はそんなところだ。


