「女の子だったぁ」



琴美姉ちゃんはお腹にいる子が女の子だと伝えると、

僕たち家族は新しい生命を心の底から祝福した。


男塗れの熱苦しい家族に念願の女の子。

母さんは嬉しさの余り、飛び跳ねるぐらいの大喜びだった。



再び始まる燈也のおち〇んちんコールが何故か心地よく聞こえる。



「ごめん、お義母さん!言うのが遅くなって……性別が分かってから、お義母さん達に言おうって航くんが言うもんだから……言うのが遅くなっちゃったの!」



「そっか、そっか……ぅぐゔ」



頷きながら泣きじゃくる父さんに、

亨兄ちゃんと航兄ちゃんは同じ言葉を言っていた。



「いや、泣きすぎやろッ!!!」



いい年こいた大人が泣きじゃくる姿を見て、家族の誰しもが笑い出す。


自分のように喜んでくれる母さん達を見て、目に光るものが映っていた。



母さんは琴美姉ちゃんに「ホントにおめでとう」としつこいぐらい言ってたっけ。



そのあと、

航兄ちゃん達は隣に建てた家へと帰っていった。



ホントこの日の夜のことは今でも忘れない。


何年も感じることができなかった家族の温かさを感じれる日だったから。



久しぶりに見た気がする親の涙に満面の笑み。

本来あるべき家族の絵を見ることは簡単なのに、描くのは難しかった。



挨拶やたわいもない話し。

他の家庭にはあって、うちにはないもの。


ホント、他の家庭が羨ましくて仕方なかった。


昔みたいに母さんや父さんと笑い合って、本音でぶつかれる日なんて来るのかな?


僕が変わればいいことなのは、

分かっていたけれど簡単な話ではない。



今更……


変わったら気持ち悪いかな?



ただ単に変われるきっかけが欲しいだけ。

引っ込み思案な僕には勇気がないだけ。


そして、家族と向き合わないだけ。



ニセモノの自分を演じている以上、この先……















永遠に僕は変わることはできない。



僕は布団の中、考え込むようにして、

いつしか深い眠りについていた。