「こら、燈也!眼鏡が壊れたらいけんけん、早よ返して来い!」



航兄ちゃんは呆れた様子で、燈也に注意を促し、泣き喚く洸也を慣れた手つきで抱き抱えた。



燈也もこれ以上ふざけすぎたらいけないと察したのだろう。


航兄ちゃんの顔色が変わるのを見て、亨兄ちゃんの許に眼鏡を返しに行く。


少しだけ空気が変わったのが見て分かる。


だけど、何一つ笑顔を崩すことなく、亨兄ちゃんは眼鏡を受け取ると、燈也に僕の方を指差しながら、何やらコソコソと告げていた。


亨兄ちゃんの悪巧む悪い顔。

はい、何だか嫌な予感がしてきたーー。



「仁にいちゃ〜ん、肩車してぇ」



すると、燈也が僕の所に走って来て、服を引っ張りながら、肩車をしてくれと懇願してきた。


ほーら、やっぱり。

僕は亨兄ちゃんに目で訴えかける。

また余計なことを言ってから、どう責任取ってくれるつもりだ。

まだ燈也だけだからいいものの。

これが奏也と洸也までもが言い出したら、僕の肩が下に落っこちちゃうよ。


そう思いながら燈也を肩に乗せ、後ろを振り向くと、そこには次は僕の番だと言わんばかりに、洸也が両手いっぱいに手を広げながら僕を見つめていた。


さらにさらに、あまり興味を持たないはずの奏也までもが目を輝かせながら、順番待ちしている状態。


あの……僕は遊具ではありません。


肩車しながら両腕にぶら下がられる僕はまさに、スーパー帰りの主婦と化していた。


一番の張本人である亨兄ちゃんはそんな僕を見て呑気に笑っている。



「仁兄ちゃんも疲れちゃうから、程々にしてあげてよ〜」



琴美姉ちゃんが僕を気遣うように、こちらを伺っていた。


さすが琴美姉ちゃん、気遣いパネェっす!


でも、少しばかり遅かったんだよね。


僕の肩はすでに死んでいた。