「こら、燈也!眼鏡が壊れたらいけんから返し!」



航兄ちゃんは呆れた様子で、燈也に注意をし、泣き喚く洸也を抱き上げた。



燈也もふざけすぎたらいけないと分かったのだろう。



航兄ちゃんの顔を見て察したのか、亨兄ちゃんに眼鏡を返しに行った。



亨兄ちゃんは燈也に笑いながら、僕を指差し何かを言っていた。



「仁にいちゃ〜ん、かたぐるましてぇ」



燈也は走って僕の所に来ては、服を引っ張り懇願していた。



僕は笑顔でしゃがみ込み、燈也を肩に乗せ、立ち上がった。



後ろには次は僕の番だと言わんばかりに、洸也が両手いっぱいに手を広げ、僕を見つめている。



そして、あまり興味を持たない奏也までもが立ち上がり、順番待ちしている状態だった。



亨兄ちゃん達は僕を見ながら笑っていた。



「仁兄ちゃんも疲れちゃうから、程々にしてよ〜」



琴美姉ちゃんが僕を気遣うように、こちらを伺っていた。



僕は順番通り、皆んなを肩車した時には、食卓には鍋が完成していた。



「できたよ〜。みんな座って食べよう」



母さんが孫達を座らせる。



食卓を囲むように、九人が椅子に座っている中、飼い猫の茶々は燈也達から隠れるように、冷蔵庫の上から様子を伺っていた。



「いただきまぁす」



燈也達は手を合わせ、取り皿に取って貰った鍋を食べ出す。



「寒くなってきたら鍋に限るなぁ〜。遠慮せんと食べ!ほら、母さん、琴美ちゃんの入れてあげて」



父さんは琴美姉ちゃんを気にしながら、大好きなビールを飲んでいた。



燈也達の声、琴美姉ちゃんの存在が家族を明るくしてくれている。



僕はいつもと違う雰囲気を楽しみながら、食事を楽しんでいると、琴美姉ちゃんが航兄ちゃんに目で何かを訴えかけているのに気づいた。



航兄ちゃんは咳払いをし、盛り上がる会話を遮るように口を開いた。