第一章



-音楽に想いをのせて-







いつしか空は薄暗くなっていて、街灯や街中の光が溢れ始めていく。



我が家に着くと、家の中は明るく、賑わう声が聞こえてきた。



「あっ!おかえり〜」



僕は勝手口からドアを開けると、琴美《ことみ》姉ちゃんが出迎えてくれた。



「ただいま」



僕は簡単に挨拶を済ませ、中の様子を確認する。



キッチンで琴美姉ちゃんとご飯を作っている母さんが居て、晩酌を楽しむ父さんと真ん中の航兄ちゃん。



航兄ちゃんの子ども達に、弄ばれる一番上の亨兄ちゃん。



家族全員が集結していて、こんなことは滅多にない。



今日は何かイベント的なことでもあるなと察した僕は、この賑わう雰囲気を馴染むのに必死だった。



航兄ちゃんは僕が小学生の時に、琴美姉ちゃんと結婚している。



その時、琴美姉ちゃんのお腹には子どもがいて、授かり婚だった。



今では三人の子が居て、みんな男の子。



長男の燈也《とうや》は小学一年生で今、亨兄ちゃんの眼鏡を持って走り回っている。



とても元気な性格で人見知りもなく、何でも興味を持てる特攻隊長的なポジションにいた。



次男の奏也《そうや》は幼稚園年長で来年は小学校。



亨兄ちゃんの隣でじっと座り、周りをキョロキョロ眺めていた。



ゆったりと穏やかな性格で手を焼くことはないが、口をポカンと開けたまま、人間観察をするこの子は、正直まだ謎が多い。



三男の洸也《こうや》は二歳で、一番上の燈也の真似ばかりしていた。



そのせいか、慣れない家中を横に揺れながら、燈也を追いかけ回っている。



それで済めばいいのだけど、足がもつれ、転んで泣き喚く始末。



これが僕が見る洸也のいつもの光景だった。



いつもは静かな日常が大きく変わり果て、騒がしくなっていた。