「はぁ?お前、なんだよォ〜、今更気づいたのかよォ、遅えんだよ一ノ瀬!はは」



今田は機嫌が上機嫌になったのか、

自慢の眼鏡を輝かせ、笑っていた。



「まあ、どの家庭にも悩みの一つや二つあるもんだ!あまり考え込まず、また何かあったら相談しろ」



「うん」



「じゃあ先生は職員室戻るから、気をつけて帰るんだぞ」



今田はそう言い残し、

笑顔で教室を後にした。



「はーい」



一人になった僕は、鞄に持って帰る物を詰め込み、帰る身支度を進める。

大半は置き勉で持って帰る物なんて、筆記用具ぐらいだけど。


僕は帰る身支度を済ませ、帰ろうとした時、教室のドアが開く音が聞こえた。


誰かが恐る恐る入ってくる。

僕は誰だろ?ってパッと振り向いたら、そこには森本さんが居た。



うわッ、気まずいって!


僕と森本さんはハッキリと目と目が合う。


この時、

三秒ぐらいだった気がするが、

僕にはもっと長く感じた。



教室内はこの場から逃げ出したいぐらい異様な空気がして、

耐えきれなくなった僕は森本さんを横切り、

教室から出ようとする。



「待って!」



森本さんの突然の呼び止めに、僕は驚き立ち止まった。