夏実はぼんやり考え事なんかしてたら、急に扉が開いた。



「え!何してんの?」



夏実と鉢合わせた母親はとても驚いていた。



「あっ、その……」



「ああ!ここに居るってことはまさか、怒られるようなことでもしたんでしょ!?」



変に勘違いされ、無駄に説教を食らいそうになっていた。



「違うよ!ただ……見てただけ」



「見てたぁ?何を?」



「お母さんを……」



「はい?どうしたの?毎日見てるじゃなぁ〜い?!」



素直に本当のことを言うと、

母親は怪訝な顔になっていた。



ホントいちいち最初から説明するのが、めんどくさい。



そう思った夏実は足早に、帰ろうとした。



「ああ、もう何でもない!邪魔するから帰るね」



「ちょ……っ、夏実!」



「私もいつかなるから!お母さんたちみたいな、人の命を救う人に!じゃあね」



一度、足を止めてから振り向き、

夏実は母親に微笑みを見せていた。



「何よ、急に……ふふ。頑張りなさい」



夏実の急な意思表明に、

母親も笑顔を見せ、

小さく声に出して応援した。



親が押しつけた叶えたくもない夢に向かって、歩いていたけれど、これからは迷いなんてない。



自分が叶えたいと思える夢に向かって、走り出せるから。



航兄ちゃんが雨の中、

「夏実ちゃんちに口挟む権利なんてないけど、これだけは言わせて!

夏実ちゃんには、笑って楽しいと思える人生を歩んでほしいな!

そんで、自分のしたい夢を叶えて欲しい。

これは仁もそうだけど!将来、夏実ちゃん達が楽しい人生をを過ごしてくれていたら、おじさんは幸せだ」

って夏実に言ってくれたことを思い出す。



きっと航兄ちゃんも喜んでくれてるはず。



悔いのない虹色の人生にしたら。