航兄ちゃんは相変わらず目を覚さない。



先生の言ったことは本当だった。



それでも、希望を捨てず、

航兄ちゃんの傍にいたら、

指先が微かに動いたのを感じる。



先生は反射的なものだと言うけれど、僕には航兄ちゃんが生きたいと言ってるように思えた。



そんな航兄ちゃんの許へ琴美姉ちゃんは、車椅子に押されて、生まれてきたばかりの天使を連れてきた。



航兄ちゃんは目を開けて、

我が子の顔を見ることはできない。



それでも聞こえてくる元気な鳴き声に、耳を傾けていたに違いない。



きっと「パパ」って呼んでいたのだから。