人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

「ゔぅ……痛いッ!ぅッ」



突然、倒れるようにして、

お腹を抱えこむ琴美姉ちゃん。



僕は精神的なストレスで痛いのかと思ったけど、陣痛なんだと我に返った。



急いで、分娩室に向かう琴美姉ちゃんを見送って、僕たちは待ち合い室で待機する。



これから産まれてくる喜びと、

もう目を覚ますことがない哀しみが、

複雑に交差し合う中、

ただ待ち合い室で待ち続けた。



「うちは不幸なことに無縁だったからなぁ。本当にどうしたらいいもんか……」



酷く落ち込む父さんは、

延命治療で心が揺れていた。



体を傷つけてまで……。



それは母さんも一緒だった。



だけど……










それでも生きてて欲しい。




腹を痛めて産んだ子なのだから、

大切な家族だから。



それが家族の下した答えだった。