人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

その後、航兄ちゃんの手術を担当した先生は、航兄ちゃんの状況を母さんたちに説明してくれた。



「なんとか、一命は取り留めましたが……まだ予断を許されない状態です」



「先生、航は目を覚ますんですよね?」



「それは断言できません。今は一ノ瀬さんの生命力を信じるしか……ないかと」



「そんな、これからが大事って時に!」



母さんは悔しさを滲ませる。



「それと……もし仮に目を覚ましても、何らかの障害が残るかもしれません」



先生は容赦なく、残酷な知らせを母さんたちに告げる。



心肺停止してから心臓が動き出すまでに、時間がかかりすぎて、脳に負担がかかったためらしい。



それでも、先生は『心臓がまた動き出したことだけでも奇跡』だと前向きになるように言ってくれたけれど、あまり前を向ける気分ではなかった。



「障害って?」



「手や足が思うように動かせなかったり、上手く喋ることができなかったりと、今まで通り生活するのが厳しくなるかと……」



「くゥ……何で航くんが!!」



琴美姉ちゃんは項垂れるようにして、崩れ落ちては、何度も何度も床に当たり散らかしていた。



また笑って航兄ちゃんと会話することができるのか?



もうすぐ産まれてくる我が子を航兄ちゃんは、抱っこしてあげることができるのか?



先見えぬ未来に対する絶望と哀しみという雨が、容赦なく僕らに降り注ぐ。



今は傘もささず、グッと堪えるしかなかったのだ。