青春のたまり場 路地裏ワンウェイボーイ

 夕方、夫婦水入らずの時を過ごしておりますと聞き覚えの有る声が聞こえた。 「こんにちはーーー。」
誰かと思って出てみたら太郎のお母さんだった。 「ごめんなさいね。 太郎が奥さんを投げ飛ばしたみたいで。」
「え? 投げたんじゃなくて突き飛ばしたんだけど、、、。」 「あらやだ。 実さんからは投げ飛ばしたって聞いたから慌てて飛んできたのに。」
「あいつも大げさだからなあ。」 「それで奥さんは大丈夫なの?」
「スッ転んで肩を打ったとは言ってましたけど、、、。」 「大ケガにならなきゃいいけどなあ。」
 俺たちが話していると芳江が歩いてきた。 「あらあら芳江さん 大丈夫?」
「うん。 撃っただけだから何とも、、、。 いててて。」 「今日は無理しないでね。 大事な体なんだから。」
「うん。 今日は旦那に思いっ切り甘えてます。」 「いっつもね。」
「水を差さないの。 馬鹿。」 「ごめんごめん。」
「まあまあ、仲いいこと。 太郎にはどうする? どうせ謝れって言っても謝らないとは思うけど、、、。」 「あいつのことは放置してます。 警察が調べるでしょうから。」
「そうねえ。 こんなことは初めてじゃないもんねえ。」 「え?」
「あらら、芳江さんは知らなかった?」 「あんまり付き合いが無いから。」
「そうよねえ。 片岡さんたちも焼いてるような馬鹿息子だもん。 付き合わないほうが賢明よ。」 お母さんは俯いたまま帰っていった。
 「太郎君ってそんなに危なかったの?」 「そりゃそうさ。 片岡さんの弟をボコボコにして半殺しにされたり田中さんの嫁さんに手を出したり、、、。」
「まあまあ、そんな人がこの町に居たのね?」 「会ったこと無いってほうが珍しいよ。」
「そうなのか。 今夜は何食べるの?」 「そうだなあ。 お前でも食べようかな。」
「じゃあ私の食べ物が無いじゃない。」 「猫でも捕まえてくれば?」
「あのねえ、チーターじゃないんだからね。 私は。」 「ごめんごめん。 野菜を買ってくるわ。」
「ああ、私も行く。」 「お前は家で休んでなさい。」
「でも、、、。」 「いいから休んでな。 これ以上ひどい目には遭わせたくないんだ。」
「あなた、、、。」 初めて芳江はポーっとなってしまったらしい。
今までならなかったのか? たぶんそうだねえ。
 だってさあ高校の卒業式の日に「ずっと傍に居たい‼」って泣きながらくっ付いてきてその勢いで結婚しちゃったんだもんねえ 俺たち。
そのまま黙って食堂で働いてれば良かったのになあ。 何もこんなバイト男子を捕まえなくたって、、、。
 葱だの玉葱だのニンジンだのと野菜を買ってきた俺が玄関を開けると芳江が飛んできた。 「いっぱい買ったのねえ?」
「そりゃそうだよ。 今夜は鍋にしようと思ってるから。」 「まだ寒くないのに?」
「いいじゃないか。 味噌鍋だ。」 「ワーオ、美味しそう。」
 そう言いながら買い物袋を持とうとする芳江ですが、、、。 「いててて、、、。」
「だから無理するなって言ってるだろう。 大事な体なんだから。」 「大事な体?」
「これから先、我が家の姫と王子を産まなきゃいけないんだからな。」 「それだけ?」
「それだけもくそもねえよ。」 「そうよねえ。 取り敢えず聞いておくわ。」
「取り敢えずって何だよ? またお説教してもらおうかな?」 「やだやだ。 それだけはやめて。」
 いつもの漫才をやりながら台所に来るんですわ。 俺が野菜を切っていると、、、。
「やっぱり男ねえ。」って感心したように言ってきた。 「男ですけど何か?」
「んもう、、、。 雰囲気を考えてよ。」 「考えてますけど。」
「じゃあ、おっぱいはお預けね。」 「やだやだ。 それは困るーーーー。」
「まったくもう、、、。」 今夜も熱い熱い夜になりそうだな。

 鍋を突きながらテレビを見ている。 クイズ番組をやっているようだ。
「ブワーーーー、間違えやがった。」 「おいおい、大根を飛ばすなよ。」
「ごめんごめん。 テレビに夢中になってて。」 「たまには俺の話も、、、。」
「いいからいいから。 うどんでも食べてて。」 芳江はそう言うとまたまたテレビに夢中になるんですわ。
 思う存分、腹いっぱいになった俺はそっと風呂を沸かしに行く。 んでもって思い切り背伸びをする。
吉江がレジの前で思い切りスッ転んだところを思い出してみる。 「派手だったよなあ。」
「何が?」 「うわ、芳江だ。」
「私がどうかしたの?」 「テレビに夢中だから今のうちにお風呂を沸かしとこうと思って、、、。」
「ありがとねえ。 ごめんなさいね。 ダーリン。」 振り向いた俺にいきなりのチューをするもんだから固まっちまったぜ。
「可愛いわねえ。 お坊ちゃん。」 「誰がだよ?」
「あなたよ。 あなたしか居ないでしょう?」 「はいはい。 そうですねえ。」
「怒った?」 「別に。」
そう言いながらチューをお返し。 と思ったら芳江はもう食堂に入っていた。
あんちきしょう‼