「お、着けてきた」
「坂上先生! なんですか、突然……」

 シーッ、と口に人差し指を当てながら聖くんの袖を引っ張り、人気のない方へ連れて行く。

 もうっ! 周りに聞こえちゃうじゃない!

 せっかく亮平がくれた指輪。今日はやっぱり外していこうかと思ったんだけど『絶対外すな!』と厳命され、そのまま外さずに来た。まだ慣れなくてすぐに触ってしまう。

「いやー成功したんだ、亮平のプロポーズ。おめでとう! 正直俺、自分のことより心配したよ」
「ハハハ…………ご心配をおかけしました」

 やっぱり……。
 完全に聖くんが一枚噛んでるよね。もちろん雅ちゃんもだ。あの指輪がピッタリサイズなんてあり得ないもの。

 心配してくれたんだな。今は二人とも最高潮に幸せで忙しい時なのに、私達のことまで気遣ってもらって……。
 いつも底なしに優しい兄姉だ。本当に感謝しかない。

「けど……また派手に付けられたね。この暑さに不自然なハイネック。しかも、隠し切れてないし」

 うぅ……そうなのよ。
 昨夜は、亮平ったら盛り上がりすぎちゃって、朝になって鏡を見て吃驚した。ハイネックを着てるのに、隠れてない! 亮平のヤツ、やり過ぎよ! 
 もちろん、プロポーズはすっごく嬉しかったけど……。

「フフフ……しばらく、お預けにしようと思ってるんです」

 そう言ってにっこり笑っておく。
 あ、聖くん顔が引きつってる。でもお預けされて当然だよね。