「結衣子先生、この段ボールどこに置きますか?」

 同僚の三隅先生が薬品や絆創膏の詰まった段ボール箱を肩に担いで入ってきた。

「あ、すみません! 棚の前に横並びでお願いします」
 
 ここは聖堂館学園小学部の保健室。
 2泊3日のサマースクールが終わり、貸し切りバスが到着したばかりだ。

 私、枚岡結衣子(ひらおかゆいこ)は養護教諭としてサマースクールに同行していた。

「あと2箱も持ってきますね」
「結構重いんですよ。助かります!」

 2泊3日のサマーキャンプに参加した児童は、5年生の98名。ポイントハイクに川遊び、今流行りの巨大アスレチックも体験する3日間は、どれだけ気を付けていてもケガ人が増える。そのため医療品はは想定より多く準備していた。

「今回も怪我人、多かったですねー」
「はい! でも今年は大怪我がなくて良かったです」

 昨年は骨折した児童がいて、近くの総合病院まで付き添い、保護者に迎えに来てもらうといったトラブルがあった。元気に遊んでくれるのは結構なことだが、子供達の楽しい思い出作りのためにも怪我は最小限にしてもらいたい。

「梱包を解くのは月曜日でいいか……」

 帰りのバスが渋滞に巻き込まれ、解散予定時刻より1時間以上遅れての到着になった。児童達も疲れたことだろう。

 今年は梅雨明けが早く、7月初旬の今はキャンプには最適のカラッとした天候だったけど、日中の暑さは半端なかった。

 とにかくシャワーが浴びたい!
 汗やら日焼け止めやら虫除けやら、1秒でも早く肌から余計なものを取り除きたかった。

◇ ◇ ◇