「中野様、今年もご宿泊ありがとうございます」

「お久しぶりです。今年もよろしくお願いします」

ホテルマンは笑顔を見せた後、頭を下げる。それに釣られるように雪も頭を下げてしまった。頭を下げた雪の顔は赤く染まっている。

(ここで働いてくれてた!やっぱりイケメンさんだなぁ……)

白銀新(しろがねあらた)と書かれた名札を胸ポケットにつけた彼の顔は、ホテルマンとは思えぬほど整っている。まるで芸能人が映画の撮影をしているようだが、新はれっきとしたこのホテルのホテルマンだ。

フロントで受付を済ませると、部屋の鍵を渡される。鍵を受け取ると隣にいた新が言った。

「中野様、お荷物お持ち致します」

「あ、ありがとうございます」

新はキャリーケースを手にすると、「こちらです」と案内しながら歩き出す。エレベーターに乗り、十階まで一気に上がった。

「中野様のお部屋はこちらになります」

「ありがとうございました」