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おしゃれなカフェでティータイム。
映画館でラブストーリー鑑賞。
服屋でショッピング。
普通のデートコースを、彼氏ではない人と回っていくのは不思議な感覚だ。
「響、俺に似合いそうな服、選んでよ。俺は響のを選ぶから」
「私がレイのを? センスないから嫌」
レイ。
“様”付けを禁止されて、悩んだ結果の、愛称。
敬語がないことだって、違和感しかない。
だけど、麗矢様本人がそれを望むのだから、応えるしかなかった。
「……ダメ?」
跡取り息子と使用人という関係性がなくなった途端、彼が同世代の男の子にしか見えなくなってしまった。
「……わかった」
自分の見た目を武器に使われると、勝てるわけがなかった。
いつもの私なら、もう一度拒否をしていただろう。
その、いつもの反応ができないことを、麗矢様は満足そうに見てくる。
これを居心地が悪いと捉えるか、照れていると捉えるか。
きっと、後者だ。
それがわからないほど、自分の感情に鈍感ではない。
だけど、素直になる勇気は持ち合わせていない。
「響」
麗矢様の服を選ぶ余裕もなく、ただ服に触れていると、名前を呼ばれた。
そうかもしれないと思い始めたせいで、名前を呼ばれるだけで、心拍数がおかしくなる。
「これ、着てみて」
私は言われるがまま、服を受け取って試着室に逃げ込んだ。



