麗矢様のナイショの溺愛


* * *


 週末、響と出かける日。


 一緒に住んでいるんだから、待ち合わせなんて必要ないってわかってる。


 でも、デートっぽくしたくて、駅前で集合することにした。


 響は、どんな格好で来るだろう。


 あの雰囲気に似合った、クールな格好?


 意外と、可愛らしいスカートとか?


 想像するだけで、どれもよかった。


 待ち合わせだけでこんなにも浮き足立つのは、初めてだ。


「麗矢様」


 少し離れた場所から、響の声がした。


 視線を移すと、見慣れない姿の響が、そこにあった。


 いつもストレートの栗色をした髪は、黒いキャップで押さえられているけど、その毛先はウェーブがかっている。


 普段よりメイクをしているのか、目元がはっきりとして、唇は柔らかそう。


 いろいろ想像した服装は、クールタイプだった。


 でも、肩を出した服は、気に入らない。


 男がこの響を見るのは、嫌だ。


『嫉妬で暴走でもしたか?』


 そうだ。


 俺は一回、失敗してる。


 抑えろ、俺はまだ、響を独占していい立場に居ない。


「麗矢様?」


 響は俺の顔を覗き込む。


 他の女子ならあざといと思うのに、ただ可愛いとしか思えなかった。


 それにしても、息を吐くように、女の子の容姿を褒めてきたのに、役に立つ気配がない。


「……今日は、敬語も“様”も禁止ね」


 俺は、そんなことしか言えなかった。