麗矢様のナイショの溺愛


* * *


 やらかした。


 なにやってんだ、俺。


 ただ、響の笑顔が見たかっただけなのに。


 あんな、子供みたいなこと言って、響を困らせて。


 逆効果に決まってる。


「麗矢?」


 適当に歩いていると、後ろから声をかけられた。


「……流星」
「お前も凛花のところに行くんだろ? 一緒に行こうぜ」
「え? あ、ああ……」


 そういえば、凛花から連絡がきたから、出かけたんだった。


「どうした?」


 俺が曖昧な反応をしたから、流星は心配そうに見てくる。


「……いや、なんでもない。行こう」


 正直遊ぶ気分ではないけど、遊ぶことで気を紛らわしたかった。


「もしかして、響サンとなんかあった?」


 さすが幼なじみと言うべきか、鋭い。


「……ないよ」


 だけど、あんなことがあったなんて、かっこ悪くて言えない。


 すると、流星はため息をついた。


「そんなんでなにもないわけないだろ。いよいよ、嫉妬で暴走でもしたか?」


 嫉妬?


 響は、俺に嫉妬なんてしなかった。


 したのは、俺か。


「……俺って響のこと、どう思ってるんだろ」
「はあ?」


 流星は呆れた表情をして、またため息をつく。


「自分で気付け、ポンコツ」


 そして流星は俺の肩を拳で押すと、俺を置いていった。


 俺は今言われたことをゆっくり考えたくて、人のいない場所を探して歩き始めた。


 家には、戻りたくなかった。