* * *
箒で枯葉を集めていると、背後から視線を感じた。
振り向くと、麗矢様が玄関先の階段に腰を下ろし、じっと私を見つめている。
少し不機嫌そうに見えるのは、私の気のせいだろうか。
「どうされました?」
なぜか、麗矢様はすぐには答えない。
麗矢様の言葉を待っていると、冷たくなった風が、頬を撫でた。
それどころか、せっかく集めた葉を散らかした。
麗矢様の様子は気になるところだけど、私は仕事を進める。
「……男といた」
再び背を向けたとき、麗矢様の寂しそうな、でもやっぱり不機嫌な声が聞こえてきた。
麗矢様は拗ねた表情をしている。
「なんで、あの男には笑顔を見せたの?」
なんのことかわからなくて、ただそれを言えばいいだけなのに、戸惑いが勝り、声が出なかった。
麗矢様はゆっくりと私に近寄ってくる。
女にしては高い方の私より、少しだけ高い視線。
その寂しそうな瞳から目がそらせないでいると、麗矢様の指先が、私の頬に触れた。
「響は、俺のでしょ?」
まるで子供のような独占欲。
私の全てを支配しようと思っているのは、なんだか気に入らない。
私は右手で麗矢様の手を退けた。
「貴方の世話係であって、私自身まで貴方のものになった覚えはありません」
いつもよりもはっきりとした拒絶の言葉に、麗矢様は驚き、バツが悪そうに出かけて行った。



