* * *


「見て、響。また女の子からもらっちゃった」


 学校から帰ってきて私を見つけると、麗矢様は可愛らしくラッピングされた手のひらサイズのプレゼントを見せつけてきた。


 でも、そんなものを見せられても、どう反応すればいいのか知らない。


「妬いた?」


 麗矢様はニヤリと笑う。


 そして理解した。


 この人は、私の反応を見て楽しもうとしているらしい。


 なかなか最低なことをする。


 なんて、雇い主のご子息様、ましてや彼の専属世話係の私が言えるわけもなく。


「いいえ」


 そんなことを思いながらも、私は冷たく返した。


 これだって許される態度ではない。


 でも、麗矢様と歳の近い私がこれだから、私は東雲家の御屋敷で働けている。


 クビにならないためにも、この態度を崩すわけにはいかない。


「妬かないの?」
「はい」
「俺がこれ食べてもなにも、思わない?」
「毒でも入っていたら面倒だと思いますけど、麗矢様が食べたいのなら、食べればいいと思います。あとで紅茶を淹れますか?」


 淡々と返すと、麗矢様はつまらなさそうにする。


「……いらない」


 とぼとぼと去っていく背中を見ながら、ため息をつく。


 東雲家で働くようになって一ヶ月。


 あの人は、暖簾に腕押し状態でも、私に構ってくる。


 そろそろ飽きてほしい。