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わからないでも、好きじゃないでも、嫌いでもない。
『言いたくない』
響は苦しそうに、そう言った。
「……どうして、言いたくないの?」
響は俯くばかりで、答えてくれない。
無理に言わせるのはよくないとわかるけど、このままこの話題を終わらせたくなかった。
だから俺は、響が話してくれるのをただ待った。
「……麗矢様を好きになれば、クビになる、から……」
響は震える声で教えてくれた。
どうしてそんな条件があるのかと思ったけど、松永の言葉を思い出した。
俺が声をかけると新人が使いモノにならなくなるから、構うなと。
そう言うなら、俺と同年代の人を雇わなければいいのにと思っていた。
まあ、そうされると響と出会えなかったから、難しいところではあるけど。
「響はクビにならないよ」
驚きと戸惑いの混ざった表情で、響は俺を見る。
今日一日で、随分と感情を見せてくれるようになった。
俺は、それが嬉しくてたまらない。
「まあ、もしクビになって、響があの家からいなくなったら、俺は毎日でも響に会いに行くよ」
響の感情がぐちゃぐちゃになっているのが、その表情から読み取れる。
「ところで響。今の、俺のことが好きで離れたくないって言ってるみたいだったけど?」
響は耳まで真っ赤にして、顔を逸らした。
それが可愛くて、口元が緩んで仕方なかった。



