麗矢様のナイショの溺愛


* * *


 わからないでも、好きじゃないでも、嫌いでもない。


『言いたくない』


 響は苦しそうに、そう言った。


「……どうして、言いたくないの?」


 響は俯くばかりで、答えてくれない。


 無理に言わせるのはよくないとわかるけど、このままこの話題を終わらせたくなかった。


 だから俺は、響が話してくれるのをただ待った。


「……麗矢様を好きになれば、クビになる、から……」


 響は震える声で教えてくれた。


 どうしてそんな条件があるのかと思ったけど、松永の言葉を思い出した。


 俺が声をかけると新人が使いモノにならなくなるから、構うなと。


 そう言うなら、俺と同年代の人を雇わなければいいのにと思っていた。


 まあ、そうされると響と出会えなかったから、難しいところではあるけど。


「響はクビにならないよ」


 驚きと戸惑いの混ざった表情で、響は俺を見る。


 今日一日で、随分と感情を見せてくれるようになった。


 俺は、それが嬉しくてたまらない。


「まあ、もしクビになって、響があの家からいなくなったら、俺は毎日でも響に会いに行くよ」


 響の感情がぐちゃぐちゃになっているのが、その表情から読み取れる。


「ところで響。今の、俺のことが好きで離れたくないって言ってるみたいだったけど?」


 響は耳まで真っ赤にして、顔を逸らした。


 それが可愛くて、口元が緩んで仕方なかった。