澄ましたメイドのご主人様。

とんでもない人だ。

全く褒めていないけれど,とても良い趣味をしている。

千藤茉悧と言う人間のたった一部を垣間見ただけで,私はそう理解してしまった。

とても,顔のいい人だった。

中身はぐちゃぐちゃで,同い年のはずなのに,背伸びしている様だった。

あんな拗れた上に危ない人と,私は向き合っていかなくてはいけない。

それが私に依頼された,仕事。

……そう,これは,仕事。

明日からだって通勤したい,大事な仕事。

変に取り乱しては,いけない。

動揺せず,早く受け入れられるようにならないと……

家に帰ると,どうだったかと様子を根掘り葉掘り尋ねられる。

そして,どう答えたものかと普段より更に無口を極めた私は,両親に大きな心配をかけてしまったのだった──。