澄ましたメイドのご主人様。

正直……?

もしかして説明は不要で,ただ謝ったり取り繕ったりするのが正解だったんだろうか?

確かに,私が何を考えていたかなんて,茉悧様が興味を持つ理由はない。



「……そうですね,茉悧様は,きっと誰かを大事に思う時があると思います」

「どうして?」

「勘です」



あまりに適当な返しで,茉悧様は目を丸くした。

そして,吹き出すように笑う。

茉悧様は,普段からこうなんだろうか?

特別なことなど何もないのに,とても楽しそうにしている。



「じゃあ,花蓮は? 花蓮も大事に思う人がいるの? これから先は?」

「さあ? どうでしょう。今は何ともない人でも,明日もそうとは限りません。いつか私も,誰かを好きになるかもしれないとは思っています」

「じゃあ,俺のことも好きになるかもしれないの?」



面と向かってそんなことを聞かれると,言葉につまった。

けれど,恥ずかしがることはない。