男性の話をまとめると、「親に幼い頃から暴力を振われ、成人しても家を出ることも許されない。給料を家に入れ続けながら、なんとか家に置いてもらっている」という話だった。

その時、私は高校生だった。

私の助けられる範疇《はんちゅう》ではないと判断した。

だから警察の相談窓口、その他の手助けをしている窓口などをその場で調べ、紙に書いた。

しかし、そんなところに相談できるならすでにしているだろう。


その男性はお礼を言いながらも、申し訳なさそうにすぐに去っていこうとした。


だから・・・


「あの・・・!私はまだ高校生です。貴方を助けられる力も多くはないかもしれない。でも、一つだけ覚えておいて欲しいんです」

「一緒に悩んでくれる人が、この世界に一人はいます。絶対に。私は貴方の力になりたい」


帰ろうとする男性に、私はノートの切れ端に自分の携帯番号を書いて押しつけた。


「今は時間がなくて、全然案が思いつかなかった。もっと時間を下さい。貴方は一人じゃない」


男性はノートの切れ端を受け取って、走って逃げてしまった。