「いい子だ」

そう言って、千田さんが私の頭を撫でる。

「ちょっと!今は残業代をつけるので、勤務時間のはずじゃ・・・!」

「それは車で送っている間だ。今もうお前は車を降りただろう?」

「そんなのずるいです。それに一度帰ってもう一度迎えに来るなら、この時間も合わせて勤務時間のはずです・・・!」

私の抗議を無視して、千田さんは行ってしまう。

私は深く息を吐く。

何故か、父の怪我で高まっていた緊張は少しほぐれていた。

幸い父の怪我も大したことがなく、一時間ほどで千田さんを呼んで屋敷に戻った。

しかし、恥ずかしくて帰り道はあまり話せなかった。