「ちょ、ちょっとやめてよ、もう……」

「えへへ」

 にっこりと笑って桜井さんを見ると、彼女は私を見て言った。

「なんか、その微笑みも久しぶりだけど。最近、仲良しの沢島課長が異動になるから元気なかったでしょ、田崎さん」

 いや、それは違う。そうじゃない。

「桜井さん。それは違います。課長が仕事をこっそり少しづつ私に振ってくるんです。ここでやりかけの入力とか、残しておきたいものとか、自分で出来ない分を全部私に……ひどいと思いません?桜井さんも手伝って下さいよ」

「うーん、それは頼む方の問題だから、私には何も言えないなあ。やっぱり、田崎さんに頼むとちゃんとやってもらえるからじゃないの?」

「あ、どうしてそういうこと言うんです?桜井さんと比べて私のどこがちゃんとしているんです?入力だって桜井さんの方が倍ぐらい速いのに何で私?」

「ほら、うるさいぞ、田崎。しっかりやれ。頼んだの終わったのか?」

 後ろから誠司さんが来た。むうう、許すまじ、誠司さん。どうして私に仕事全部やらせるのよ!昨日の夜も家で文句を言ったら、聞こえないふりされた。頭来たから今朝は無視したのに、平気な顔してる。じろりと睨んだら涼しげな顔をしている。