課長のケーキは甘い包囲網


「ま、それだけじゃないよな、沢島さん。男から見たら連れ込みだぞ。うちのすみれはウブだっただろ?」

「お兄ちゃんまでそんな言い方やめて。助けてもらったの。もちろん、私は課長が苦手なら絶対行かない。実はアルバイト時代、課長がコンビニに来て、お客さんに絡まれていた私を助けてくれたのが最初の出会いなの」

「まあ、本当なの、それ?」

 お母さんが驚いた。

「そう。で、偶然面接でその話をしたら面接官が課長で。ビックリしたよね」

「はい、私も驚きました。彼女がエピソードとしてその話を面接で出して、つい名乗り出てしてしまいました。他の面接官も笑ってました」

「まあ、運命的ねー、いいわね、あなた」

「……」

 何も言わない渋ヅラのお父さん。お兄ちゃんが何か言えと目配せした。私は意を決して話した。

「だからね……お父さん、あの縁談はお断りさせてください」