課長のケーキは甘い包囲網


「お父さん、失礼ですよ。すみれが会社でお世話になっているそうです。お礼を言わないと……さあ、おかけ下さい。一緒によかったら召し上がってください」

 そう言ってお母さんがお父さんを睨みつけ、私には目配せした。私は彼に座ってもらった。お父さんもようやく座った。

「お父さん、こちら人事総務課長の沢島さんです。私が入社してからの直属上司です。それから、あの、お付き合いしている人です」

「こちらが父と兄です。紹介が遅れました」

「……今更だろ。沢島さん、俺はすみれから聞いてると思うが板前修行中だ。春にはここへ戻ります」

「お父さん、お兄さん。私はすみれさんと真剣にお付き合いさせてもらっています。お兄さんはご存知ですが、彼女のアパートの場所が危険なので、最初はうちのゲストルームを貸してました。同じ駅を利用してましたので、上司として……」

「はあ?」

 お父さんはびっくりしたようだ。それはそうだろう。