「あらあ、今日はハイネックのそんな服着て残念だわ。勝俊びっくりしたらしいから、楽しみにしてたのに。さすがに今日は気をつけてるわね。お父さんに見られたら大変よー」

 私はキスマークのことを言っているんだとすぐにわかった。お兄ちゃんの馬鹿。お母さんにそんなことまで話したのか……。

「お母さん!」

「はい、はい。とにかく、部屋は掃除機かけておいてあげました。夜までゆっくりしたら?」

「うん、そうさせてもらう」

 いそいそと母屋の自分の部屋へ行く。日本家屋なので引き戸の扉。ああ、懐かしい。この畳の匂い。

 なんというか、住んでいる頃は洋風の部屋に憧れてたけど、帰ってくるとなんというかホッとするのは何故だろう。

 さてと、窓を開けて外を見るといい風が入ってきた。深呼吸。頑張るぞ。

 とにかく、誠司さんが来るまでに見合い話を片付けて、同棲のはなしだけにしたい。