課長のケーキは甘い包囲網


「値引きしない。ベッドで返してくれ」

 鼻歌を歌う彼に手を引かれて、また寝室へ。長い夜のはじまりだ。

 翌日。

 彼は昼に実家へ着くように出て行った。私は前日の彼のせいで少し眠くて、彼が出かけてから目覚めた。

 最近こればかりだ。本当に何とかして欲しい。

 軽くシャワーを浴びて出てきたら、電話が鳴っている。お兄ちゃんだ……なんだろう?

「すみれ、どこにいるんだ?朝もメールしたのに、もう着いたぞ」

 え?え?何言ってる?私は嫌な予感がして兄に聞き返した。

「お兄ちゃん、何の話?ごめん、どこに着いたの?」

 良かった。今起きたって言いそうになった。本当に危ないところだった。だって……。