帝都のお屋敷に着いた翌日。朝食を皆様と食べた。今日は、士貴様はお城の方でお仕事があるとかで朝食後すぐにお城勤めのお義父様と出かけて行った。


「さぁ、紗梛さん。私たちはお買い物に出かけましょう」

「はい! 郁世様、よろしくお願いします」


 まだまだ口に出して『お義父様』『お義母様』と言うのは恥ずかしくて名前で呼ばせてもらっている。恥ずかしいというか緊張が大きいのだけど……

 私とお義母様は準備していただいた馬車に乗り込み帝都の中心部にある皇族の御用達の呉服店にやって来た。


「いらっしゃいませ、長曽我部様。お待ちしておりました」

「急な予約、ごめんなさいね。今日はうちの義娘(むすめ)の着物を仕立てたいと思っていてね」


 ここはお義母様の行きつけのお店らしくて、よくここで仕立ててもらっているらしい。


「初めまして、紗梛と申します」

「こちらこそ初めまして。私は呉服屋女将の市河(いちかわ)と申します。よろしくお願いしますね……さ! 早速ですけど、中に入ってくださいな」


 お店に入ると美しい反物の数々が吊るされていた。

 女将さんに連れられていくと、吊るされていないものも沢山出て来てそれを一枚ずつ肩に当てられた。


「私は、これが可愛いと思うわ。どうかしら?」


 それは一斤染と呼ばれている淡い紅色の地に桜花と源氏香の柄が描かれていて派手ではないが落ち着いていて穏やかな反物だった。