時は、優桜院(ゆうおういん)の世。帝都では、一年中桜が咲いているため優桜院の世と呼んでいる。


「――紗梛、早く髪を結ってちょうだい」

「すみません」


 そしてここは、帝都とは少し離れた結華(むすびのは)と言われている(きょう)。ここに住むほとんどがあやかしや神の末裔が軍事に就いている郷であり、ここを治めているのは縁結びの神・結葉龍神(むすびはのりゅうじん)の末裔で由緒正しい家であり帝から公爵位を賜っている長宗我部(ちょうそがべ)家という。

 そして結華郷には三つの大名家があり、筆頭である(すぐる)家、茶道の名家である第二位の五十嵐(いがらし)家、香道をの名家で第三位の櫻月(さくらつき)家だ。
 その櫻月家に私は嫡女である(あや)様付きの女中として働いている。働いているというか、女中のような扱いをされている……の方が正しいのかもしれない。