「……」


心臓の辺りで、ばらついた言葉たちが、一つの文章になりつつあった。だけど、まるで長い蛇になった文章は、俺の口から出るのではなく、口を通り過ぎて頭の方に行ってしまう。


違うだろ、そうじゃないだろ。

逃げるな、降りてこい――と。俺は頭を振って、高い所で安心している蛇を、引きずり下ろす。


「だって、そうだろ……」


あんな廃墟の中でも、三石は俺と「話したい」と言ってくれたんだ。それだけ三石が、俺の事を考えてくれた証拠だ。

それなら――俺も、返さないといけない。「もう関わらない」なんて、陳腐な言葉で逃げるべきではない。


「あ、救急車来たよ。腕、疲れただろう? ありがとうね」

「……」


今まで俺は、三石の何を見て来たんだ。アイツが頑張っている姿を、この目に何度も移してきただろ。

だから、今度は俺の番だ。


「過去」から逃げるのは――今日でやめる。