『離縁して欲しい』

 それだけだった。

「ああ、心配はいらない。おまえの行き先はちゃんとある。オーディントン国だ。あの悪党どもの首領に捧げてやる。伝統の生贄の復活というわけだ」

 大階段の下、広いエントランスにいる多くの人たちから様々な声が漏れた。

 その声のほとんどが、恐怖の叫びや同情の言葉である。

「知っているだろう? もともと悪党どもの集まりだった奴らの祖先は、あらゆる手で領土を広げ、ついに国を興した。それに飽き足らず、連中は周辺国を荒らしまわって生贄を差し出すよう命じた。怖れをなした国々は、定期的に生娘を生贄として差し出した。まるで子ども向けの話に出てくる魔物の話だな」

 ネイサンは、大笑いしてから続ける。