彼らの会話は耳に入ってくる。耳だけは緊張や不安には関係なく機能してくれている。

 というか、いったいどういうことなの?

 祖国ウォーターズ帝国軍がオーディントン国の領土を侵害し、一方的にわたしを生贄に差し出したわけ?

 しかも、領土を侵害した理由がルビー鉱山を手に入れる為?

 皇帝であり元夫であるネイサンのブヨブヨした顔が脳裏に浮かんだ。

(強欲な彼が考えつきそうなことね)

 溜息が出そうになった。彼の愚かさに呆れ返ってである。

 ネイサンは、オーディントン国の国王みずから国境近くにやって来たことを知り、慌ててご機嫌取りをしたのだ。